お金と幸福に関する短編小説の完結編

キャッシングは真の幸福をもたらすか~完結編~

(⇒キャッシングは真の幸福をもたらすか~前回の続編はこちら

大切な事に気づく

証券口座の残高60万円を目にして私はかなり気分が高揚した。しかし、どことなく虚しさが残る。いや、それどころか、今回の投資のテーマであった「真の幸福」、それを自分が抱いていないことに気付いたのだ。

お金とは非常に恐ろしいものだ。お金のために人は何でもする。自分の人生を犠牲にしてでも働き続けお金を稼ぐ。家庭を犠牲にし、仲間を、親を犠牲にしてでも働き続ける。脱税・強盗・窃盗をしてでもお金を手にしようとする。他の人よりほんのちょっとだけ高い収入を得るためにそうするのだ。

しかし、自分では気づかない人もいるのだが、それだけでは真の幸福は得られない。どんなに高額のお金を手にしても、人は満足できないのが常なのである。ほんのちょっとではあるが、株式投資で60万円を手にした時、私はそれに気づいてしまったのだ。

エピローグ

私の壮大なる実験、お金は真の幸福をもたらすのか。結論はでた。お金自体は真の幸福をもたらすことはない、決してないのだ。逆に悪の根源と言っても間違いないかもしれない。生活には欠かせないお金、しかしお金だけを求める生活、人生は幸福でないと断言できる。

キャッシングの目的はお金を借りること、これに間違いはない。しかし、利用目的が非常に大切だ。それは自分の欲求を満たすためなのか、それとも何か緊急な用事で利用するのか、または他の目的なのか。どんな目的で借りるにしろ、真の幸福をもたらすことは決してない。それだけは頭に入れておいた方が良い。

キャッシングは、目の前の困難を凌ぐために非常に便利な金融商品と言える。しかし、キャッシングで得たお金で幸福を買うことはできず、得られるのは一時的な満足に過ぎない。

では、キャッシングでお金を借りる意味とは一体何なのか。それを言うなれば、人生の目的を掴みとるうえでのきっかけに過ぎない。少なくとも私は、実験でそれを体得したのだ。真の幸福を探す旅はこれから始まる。